前歯部離開症例を保険治療で治すとこうなる。

投稿者: | 2011年2月9日
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2011/2/18 他の保険診療の方法を用いた場合の費用を追記

ここ最近、アダルトなエントリばっかり書いているので、たまには真面目な内容も書くべきだと思い立ち、一筆書くことにした。

患者に写真使ってもいいですよという許可を頂いたので、写真も掲載しつつ駄文を書いていこうと思います。

さて、タイトルの「前歯部離開症例」というのはこういうもの。施術前の写真が無かったので研究用模型を撮影しました。

DSCN0203

一般的には「すきっ歯」と呼ばれたりするものです。患者本人は長年この隙間が嫌だと思いつつ、歯医者に相談すると馬鹿みたいな高額を要求されるのではないかと思って言い出せなかったとのこと。さらに、この歯自体は虫歯でもなんでもないので、削って被せるのもなんだか・・・・・というわけで、保険診療で認められている「コンポジットレジン」というものを用いてほとんど削らずに治してみました。

前準備として以下の行程を。まず最終的な形態をイメージしてワックスを用いて模型上に形成しておきます。

DSCN0202

次に、以下のようなシリコン樹脂で歯の裏側の型をとっておきます。

DSCN0201

こうすることで、実際に口の中で修復作業を行うときに以下のような空間に材料を置いていけばきれいな形態が簡単に付与できるようになります。

DSCN0206

前準備はこれだけ。

で、実際に口の中でコンポジットレジンという材料を使って修復したのがこちら。

DSCN0199

同業者に言わせれば口腔内写真取るときの光量の調節とかしっかりしろやとか言われそうですがそんなの患者本人の利益にならんので気にしません。あと作業途中の写真は無いのかとか言われると思いますが、ただでさえ口を開け続けてる時間が長くなるのにそんなの撮影するのってどうかと思うです。あとこれだけは言っておきたいんだけど、治療した本人的にはまったく技術的に満足してません

しかし、患者本人は、長年のすきっ歯が治って大変ご満足されたようで嬉しい限りでした。

さて、患者本人が気にしていた「高額かどうか」ですが、保険診療だとこの治療は、一歯につき「148点+120点+28点」となるので、二本分なので「296×2=592点」となります。「1点=10円」と計算し、この患者の負担割合は3割でしたので、「患者負担は1,780円」、ということになりました。ちなみに自費診療でこれと同様の材料を使って2万円くらい取ってるところもあるらしいですがそんなところはどうでもいいです。

~追記ここから~

保険診療内で、他の方法を用いた場合、どのくらいの費用になるのか、という比較を記述しておきます。

基本的には前述した「削って被せる」という方法が保険内で認められており、金属の裏打ちをして白い材料を唇側に盛りつける「硬質レジン前装冠」と呼ばれるものと、白い材料のみで被せる「硬質レジンジャケット冠」と呼ばれるものに大別されます。両者とも診療回数は最低でも二回かかり、前者は一本あたり「630点+60点+14点+30点」が一回目の診療時に、「1426点+45点+16点」が二回目の診療時にかかるので、二本分として「4442点」、後者は一本あたり「160点+60点+14点」が一回目の診療時に、「963点+45点+16点」が二回目の診療時にかかるので、二本分として「2516点」。負担割合が3割とすると、患者負担は「前装冠の場合が13,330円」、「硬質レジンジャケット冠の場合が7,550円」、ということになります。いずれも初診料や再診料、他の検査などは省いたものです。

~追記ここまで~

これを見て「私もやりたい!」と思った方に諸注意をいくつか。

注意点・その1 : 結果の仕上がりは術者の技術に大きく左右される

いやまぁなんでもそうなんですけどね。コンポジットレジンという材料は、今ではいろんな色調のものが用意されていて、多種多様な人の歯の色に合わせられるようになっていますが、その選択眼が術者にないと、自分の歯との境界がはっきりくっきりして明らかに「なんかくっつけた」感が出ます。この症例の場合、六種類の色調のコンポジットレジンを重ねて作っていますが、術者によっては一種類のみでやる人も少なくないのが歯科界の現状です。

注意点・その2 : 人によってはすぐに欠けたり壊れたりしてしまう

これは前述の術者の技術力によるところもあるんですが、例えば「前歯が常に下の歯(or上の歯)と当たっている」人の場合、修復した部分に負荷が強くかかるため、すぐに欠けたりしてしまいます。この場合、いわゆる「差し歯」にするべきな人もいます。

注意点・その3 : アレルギーの人もいる

金属アレルギーの人が金属の被せ物を使えないように、このコンポジットレジンという材料にアレルギー反応を引き起こす人が稀にいます。そういう方には用いるのを避けることがあります。

注意点・その4 : 「それは自費です」とか言い出す歯医者もいる

保険診療で出来ることなのに、同じことを自費診療として数万円請求する歯医者もいます。「保険適用外の材料を使っているんだから自費診療だ!」というのが彼らの主張ですが、実は先程の症例はその「保険適用外の材料」を使って保険診療しています。実際、保険診療で使用が認められているものよりも色調が合わせ易く、使いやすいのです。それはダメなことじゃないの?と言われれば確かにそうなのですが、保険適用外の材料は「認められているものに対して原価が高い」ので認められていないだけで、使われている成分は保険診療として認められているものと同じものです。保険適用外の材料を使って保険診療として治療している私は大きな声で言えないのかもしれませんが、患者が満足してくれれば原価が高かろうがどうでもいいです。ちなみに知り合いの同業者には私と同じ考えの方が何人もいます。

自分の稚拙な施術を公開するのは恥ずかしいものですが、皆さんの歯科治療の選択肢の一助となれれば幸いです。

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